おとのね

あとは根となれ音となれ

12の愛にあてられて

愛ある創作は呼び水である、という持論がある。
それが絵であれレジンであれ、そして文字であれ、愛に浮かされて愛を一心に込めた創作は見た人の心に強く根付いて呼吸を始める。
後から後から湧いてくるこの感情をわくわく、と名付けた顔も知らぬ先人に感謝したくなる。






と、改めて書き記したくなったのは、記念すべきUNISON SQUARE GARDENの特攻隊長ことCatcher In The Spyの誕生日に満を持して放たれたこの文章を読んだ瞬間からである。
今も体が求めるままに、文章を書く心地よさを分けてもらったかのように、無心に筆を走らせている。

CITSに愛をささやく人間が星の数ほど居ようとも、CITSにまつわる12のTaleをこんなに自由に、鮮やかな切り口で心ゆくまま書き起こした文章はないのではないだろうか。
この気持ちはなんだろう。歯がゆい?悔しい?そんなありふれたネガティブな思いを軽々と超えて。

混ぜてくれ、と思ったのである。

追いかけっこに入れてほしいとは微塵も思えなかった、外遊びが心底苦手な人間が持っていい感情ではないかもしれないが、そうとしか言い表しようがない。

何度でも言おう、誰に何と言われようとも影響されないほどの愛で構築された創造物は、見た人間を巻き込んで渦潮のようにうねりだす。

文字でしか愛を叫べないとのたまいながら、手にした一つの武器を丁寧に磨き続けたならば、それは何にも勝る宝石であり、目を奪う輝きを放つ。その光が今照らすものは何か?自分でも気が付かない内に沈めた文字への純粋な欲求である。

拙いながらもCITSの物語を私なりに編んでみようと腰を上げた今日を何と言おうか。
誕生日。CITSの陰にひそりと隠れるように、ずっと書きたかった物書き置き場をおずおずと作ってみる。

お題はCITSの12.5番目の物語、あるいは妄想である。寄稿のいろはも知らぬまま書く、アルバムには収録されない端数のトラック。もしここまで読んでくれた方がいらっしゃれば、ワームホールで一瞬だけ並行世界に飛んでしまったと思ってご笑納いただきたい。


▽12.5 鉱物とCITS

CITSの独特なエッジの効いた12の音楽を、私の中の物差しで表すならば鉱物だろうか。
もちろん音楽の裏側には数え切れぬ程の人々が集っていることを踏まえた上で、CITSの楽曲たちと出会った時の感覚は「美しい宝石が産出された」に近かったと思う。
好ましい、けれど決してそのものになることはできない。こちらの意思通りには決して動かぬ不敵な存在感に、いつでも心惹かれてしまう。その距離感は、人間の意思の向こう側、地球の底から現れた無垢な無生物たちとの出会いに等しかった。


サイレンインザスパイは猫の目のような蜂蜜色のキャッツアイ(クリソベリル)だろうか。
こちらの視線と熱気に合わせるかのようにゆらりと揺れる光源から目が離せない。嘲笑われているかのように思えても、何故か不快さは微塵もなく、むしろずっと眺めていたくなるような衝動に駆られる。見つめているのは我々か、それともサイレンインザスパイの方なのか。

シューゲイザースピーカーにはガーネット(柘榴石)の整った形と色味がよく似合うように思う。
鈍い赤色の原石を磨いた時に現れる深紅の一筋が夜の闇を切り裂くように光る。また、柘榴石は河原で拾うこともできる場合があるとか。シューゲイザー

桜のあとはローズクォーツを選びかけてシトリンを選んだ。遠くまで見渡せるほど透明度の高いイエローオレンジ。アポロンの石とも呼ばれ幸福を呼ぶこの色が、心から湧き上がる幸福感に相応しいように感じる。

蒙昧terminationのすらりと伸びた切っ先は閉じ込められているのはルチルクォーツ(針水晶)。
加工のしやすさとそれを許さない内側の棘。ルビーの欠片が内包されていると尚のことイメージ通りである。

君が大人になってしまう前にの手元にそっと置きたいのはスモーキークォーツ。
ギラついたCITSの曲の中でも少し変わった距離感の1曲には柔らかな色味の向こう側で笑っていてほしい。

メカトル時空探検隊には不思議な形のパイライトを選んでみる。真四角が連なる、まるで人工物かのような黄鉄鉱は少しあか抜けなくて憎めないこの楽曲を連想させる。まるで生き物のように言葉を放ちそうなフォルムがどうにもお気に入り。

ニゾンが初期に多用した星というモチーフを打ち落とそうとする大胆不敵な流れ星を撃ち落せの袂にはオブシディアン(黒曜石)。どう割っても尖ってしまう断面に攻撃性をリンクさせてしまう。どこかのどう接したって怪我しそうなイントロにそっくりである。

何かが変わりそうには落ちてきた夜空のようなラピスラズリ。私たちと空をぎりぎり繋ぐ濃紺に光る涙のような、レールのような金色の筋。言いたいことがたくさんあるんだ、その模様のように複雑で、だけど本当は分かりきっている一言が。

ではharmonized finaleの空は何色だろう、星座という歌詞があるものの、その向こうの夜明けを見たい。サファイアの青も捨てがたいけれど、アクアマリンの澄んだ水色はどうだろう。

天国と地獄に分け入るならルビーの鮮やかな赤色を武器にして挑みたい。青と赤に色が変わる二面性をはらんだアレキサンドライトも候補に入れつつ、高硬度の石でトマトどころか壁まで粉砕してしまおう。

instant EGOISTのリズムに合わせてスフェンの遊色を揺らしてみたい。緑とオレンジという不思議な組み合わせが虹のように見えるのは、光に透かした時の楽しみ。

最後に黄昏インザスパイと琥珀の組み合わせを押したい。
何を内包してもゆっくりと固まる夕焼け色の許しにも似た色合い。丸い形がよく似合うのは誰も拒否をしないから。夕焼けは雲があってこそよりドラマティックに見える。

ざっと12曲分の石を挙げてみた。リズムも構文も無く書き綴ってしまったが、お気に入りとお気に入りを組み合わせるのは心底楽しい。まだまだ書き足りないが、それは今後の戒めとして残しておく。

最後に、臆病者の私の背中を意図せず蹴り上げて新しい世界を見せてくれたCITSと、とあるフォロワーに感謝の意を示して。もう少し校正させてまた書かせてね。









Q.JET CO.の民ではないのですか?
A.潜在的CITSの民に国境などないのです。ところでJET CO.とCITSって似てないようでいて熱を感じる2枚なので我々の知らないところで仲良くしていて欲しくないですか?